日本財団 図書館


 

中でも会社の規模が大きい「一般旅行業者」を取りあげてみても、その内訳は従業員20名以下の会社が約50%、従業員21名〜50名の会社が約26%、従業員51名〜1,000名の会社が約23%、従業員1,001名以上の会社が約1%であり、従業員数が50名以下の小規模旅行業者が約76%と圧倒的に大多数を占めている。これは、そもそも旅行業は設備産業ではなく、人がひとに旅行サービスを提供するソフトな職業なので、会社の規模によりサービスの内容に差が発生する業種ではないことを表している。

 

表3 旅行業者数の推移(各年の1月1日現在)

021-1.gif

(運輸省運輸政策局観光部)
(注)平成8年4月より新旅行業法が施行され、旅行業の区分および登録基準が変更されたことに伴い、平成8年4月現在、旅行業第1種:約759社、旅行業第2種:約2,250社、旅行業第3種:約6,300社、旅行業者代理業:約1,200社となっている。

 

旅行業は手数料ビジネスともいわれ、その主な収入源は、航空会社・鉄道会社・バス会社等の運送業者やホテル・旅館等の宿泊業者からの手数料と、旅行者からの手数料であることから、取扱金額の大きさの割には旅行業者の収益は少ない。また、設備投資の必要がほとんどない代わりに、機械化が難しく人手がかかるため人件費が高い業種である。もともと低収益構造であるところに、バブル崩壊後の「価格破壊」に代表される低価格競争の激化は、旅行業界にも及び、需要は強く非常に多忙であるが、その多忙さが収益に結びつかない、いわゆる増収減益の傾向が続き、固定経費の上昇は抑え切れないことから、大手業者から零細業者まで旅行業者のほとんどは厳しい経営環境に苦しんでいるのが現実である。
旅行業界は、その1%にも満たない、いわゆる大手旅行業者による「規模の利益」を追求するための系列化や寡占化が進行しており低価格競争が進行する中、小回りやキメ細かさで評価されつつも効率が低く、労働集約性と低収益性に直面する小規模旅行業者は、収支バランスがとれず経営難に陥っている業者も数多い。設備資金が不要で新規参入が容易な反面、顧客の支持や評価を失えばすぐに低価格競争に巻き込まれ、倒産や廃業も続出する厳しい業界となっている。

 

旅行業の課題

顧客満足と評価の確立が必要な旅行業界
人と旅行は切っても切れない関係にある。人は旅行することで日常の生活から離れて未知の自然や文化や人に触れ合い、感動を得て新たな自分を発見し、創造心や豊かな心、新たな勇気や意欲を養うのである。観光政策審議会は、観光を「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行うさまざまな活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」と定義しているが、観光の充実や健全

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION